2014年

11月

30日

2914年宮城県文芸年鑑

2014年宮城県芸術祭が開催され文芸年鑑が発刊されました(写真は左から文芸年鑑、芸術祭ポスター、50年史)。文芸年鑑には、短歌部門文芸賞公募に応募した県内歌人の112編(20首一組)が掲載されており、文芸賞2編、佳作8編が選ばれました。まひる野仙台からは、岡本弘子、岡本勝、小野昌一郎、奥寺正晴(HP管理人)、計4人が応募し、「四季」(奥寺)が佳作に選ばれています。なお、文芸賞は、「棕櫚の木」(鈴木昱子 群山)、「何処へ」(塔原武夫 地中海)の2編でした。

では、4人の作品から管理人の独断で各10首を選ばせていただき紹介いたします。


「生かされて」 岡本弘子

 入院せし姑(はは)に代わりて認知症の舅(ちち)との暮らしひと月を過ぐ

 わけもなくハイテンションの日もありてジャムパン掲げひとり乾杯

 生きてゆくことの素朴さ食べて寝て排泄をして無欲なる舅(ちち)

 認知症の舅(ちち)もそうではないわれも生かされて同じ雪を見ている

 父の無きわれには時に懐かしき存在としての舅(ちち)の丸き背

 舅(ちち)の家とマンション行き来する暮らしピアノの蓋に塵白く積む

 数万の脳細胞日々死滅するカチャリとドアに鍵鎖ししとき

 読み止しの本開かずに過ぎる日々あの日のわれを閉じ込めたまま

 左手の分散和音が心地よく耳から雪解けしてゆく冬日

 求め来し黄のフリージアわが部屋に生かされて春の香りを放つ


「いのちの歌」 岡本勝

 あゆの里バッハホールにかつぱの湯なにも変はらぬ古里の秋

 今もなほ命と核の鬩ぎ合ふ東北の森に生きる獣ら

 実を捨つる祖国はあらね愛しきは父母、妻、孫子、そして被災者

 闇深き銀河宇宙に汚染水たたへ浮遊す青き地球は

 「花買ってきたわね」と娘(こ)の仏前に生花たむくる妻の晦日

 ピーナツを三粒左手(ゆんで)に握りしめ虚空見つむる父の節分

 もののふでありたしと思ふ法律家辞めたる今は歌詠みとして

 早暁の妻の寝言のやさしきに寝顔を見むと寝返りをうつ

 美しきものに触れたし涙もろく老いゆくわが身をなぐさむるため

 不気味なる活断層を潜めゐる集団自衛は滅びへの道

 はつ夏のまためぐり来て睡蓮は青露に濡れ被災地に咲く


「生あればこそ死が」 小野昌一郎

 畦道をイナゴ追いつつ通いたるあれから既に七十年

 終戦後先生の指示筆を持ち教科書を消す授業の始まり

 亡くなりし後輩の妻より送られし会津みしらず友に分けやる

 子育てに病気になりし母に替わり家族支えし姉も今日逝く

 葬儀終え腹痛ひどく午後六時血圧計は百九十を超す

 開腹し命にかかわる事態にも同意をすると二人で署名

 四センチの胆石記念に持ち帰り仏壇に供え父母に報告

 開花待ち安堵するごと友は逝くOB総会また一人減る

 生まれきて貴方は星に還りましたと弔辞を述べて「昴」奏でる

 生を受け八十年にただ感謝日毎想うは生あれば死が


「四季」 奥寺正晴

 初雪に仮設住宅光帯ぶ三度目の冬柔らかく降れ

 雪降れば甘き野菜を想いだす母は小さき雪室作りし

 雪踏めばキシキシと鳴く諍いの声忘るるまで歩き続けむ

 新緑に空見上げれば胸躍る新種のオレンジ買いに出かける

 雨にぬれ揺れるあじさい見ておれば頭でっかちは我に似ている

 被災者の自死のニュースを聞いている海鳴りひとつ聞こえぬ街で

 東北に復興の力弛まざり無量光なる望み溢るる

 止むを得ないこの一言で戦争は多分始まるこの夏猛暑

 安らぎと不安の狭間に微睡むや白壁に蛾は翅を休めり

 冴え冴えと渡りの鳥は鳴き行けり晴夜の星を羅針盤として

まひる野

 東京に本部を置く全国的な短歌の会です。窪田空穂の第一歌集「まひる野」から命名され、生活実感を尊重し、詩としての豊かな表現力を希求します。自然や日常を細やかな温かい視線で詠んだ歌が特徴です。詳しくは「まひる野」のページをご覧ください。

 

<仙台 月例会について>

毎月第二土曜日に仙台市内の市民センターの一室で午後一時から概ね二時間程度です。流れを紹介します。

 

(1)その月の決められた主題に関する歌1首以上を含む自作3首の歌を提出します。

(2)作者を伏せてプリントアウトしたものが当日配布されます。自分以外の方の歌をそこで初めて目にすることになります。

(3)全部で20~30首になります。リズムを確かめながら音読します。意外に難しい漢字や短歌独特の言い回しに出会うことも学びの一つです。

(4)20~30分程度をかけて、各自で、自分の”お気に入り(共感、卓越、感嘆、臨場感などを感じる歌)”を5~7首程選びます。その中でも”これは!”という歌一首を特選として選びます。

(5)特選2点、”お気に入り”1点として集計し、合計得点の高い歌から互評します。互評というのは選んだ理由を自分なりに説明するということです。

(6)互評の過程で多くのことを学びます。技術的には不十分でも感性として高く評価されることもあります。またどんなに整った歌でも共感を覚えない、伝わらない、ということで点数が入らないということもあります。自分の歌がどう評価されるか、ということに目が行きがちですが、実は自分が選んだ理由をどう説明するか、ということが非常に大切です。

(7)一通り互評が終わると、各種の情報交換を行い終了です。高得点でも賞金はでません(笑)。次回の日程、主題など出席者で話し合って決めます。「○○に関する歌」という具合です。